糞便微生物移植(便移植)の臨床研究について

ヒトの体に住み着いている微生物は、絶妙なバランスを保って共生関係を保っていることが知られています。中でも、腸内細菌はヒトの体の細胞と同じだけの細胞数があり、遺伝子の数はヒトの数十倍におよぶ種類を有し、腸内細菌全体で1つの臓器と言ってもおおげさではないほどの存在感を示しています。ひとたびこの中のバランスが崩れると、炎症性腸疾患を含めた様々な病気を発症することが近年の研究で明らかになってきました。そのため、腸内細菌叢(腸の中のお花畑)という言葉が様々なメディアで取り上げられるようになり、注目を集めています。

便移植というのは、このようなバランスの乱れが起きたことによって病気を発症した患者さんの腸内環境を、健康な人の便をもらって整備しなおしてあげることによって回復させよう、という発想から生まれた治療法です。クロストリジウム・ディフィシルという菌が異常に増えて下痢や血便などを生じる病気に対して、今までの治療法を大きく上回る効果を発揮したことが知られたことから注目されています。

当院では、日本で初めて潰瘍性大腸炎の患者さんに対する便移植を開始しました。現在は潰瘍性大腸炎に対する研究は終了していますが、腸管ベーチェット病と繰り返すクロストリジウム・ディフィシル腸炎などに対する便移植を研究として行っています。

現時点では、安全に施行できる方法であるか、という点に重きを置いて、安全性を最優先して研究を進めております。そのため、ご協力いただく際にも様々な基準を設けております。ご興味をお持ちの方は、今かかっていらっしゃる外来の先生とご相談ください。


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