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慶應内科で内科医の土台を築き、世界に羽ばたく
内科医を目指す後輩の皆さんへ。皆さんはきっと今、理想の内科医像を思い描き情熱を燃やすと同時に、自分が内科医としてどの様なキャリアを積んでいけばいいのか分からず、不安な気持ちが共存している事でしょう。そんな皆さんに慶應の内科は一つの道標を示してくれると思います。
自分にとっての慶應内科は、内科医の土台を築き、世界に挑戦する機会を与えてくれた場所です。私自身は慶應大学卒で、医師1年目は北里研究所病院、2年目は慶應義塾大学病院で研修し、3年目に慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局、同時に大学院に進学しました。10年目から現在まで腸管免疫と糖尿病をテーマにコロンビア大学医学部微生物免疫学教室で博士研究員として働いています。
私自身は、祖母が糖尿病であったこともあり、元々内科学に興味はありました。しかし研修医になって実際の現場に出た時に、教科書の知識だけでは生身の患者さんを診ることができない事を痛感し、大きなショックを受けました。その時に大きな助けになったのが、慶應内科にいる沢山のお手本となる先輩医師達でした。1番覚えているのは、専修医時代に先輩医師がインスリンの治療方針の立て方の見本を見せてくれた時です。その医師は、単に糖尿病の病態だけを考えるのではなく、ベッドサイドで患者さんから仕事内容、食習慣、運動、趣味、費用面や家族のサポート面まで丹念に問診し、治療方法を模索していました。私は、その後ろ姿に内科の神髄を見た気がしました。内科医が全身を診るという事は、患者を全人的に診察する事なのだと教えてもらいました。今もその教えは、自分の診療の中に脈々と流れています。慶應内科が自分の内科医としての土台を築いてくれました。
内科医としての土台ができたら、次のステップは、自分が生涯打ち込むテーマを探す事だと思います。慶應大学・関連病院にはまだ診断法や治療法が確立されていない難しい疾患に苦しむ患者さん達が沢山来院されます。その時に皆さんは全力を尽くして診療にあたるでしょう。しかしその中で、自分の無力さにもがき苦しみ、壁にぶち当たる時がくると思います。そういった患者さんの声に真剣に耳を傾ける事で、おのずと自分が内科医として今後どんな疾患と向き合っていくのか、生涯取り組むテーマを見つけ出せるかもしれません。慶應内科では、昔からの習慣で研修医や専修医に、新規性のある症例の学会報告を積極的に指導する様にしています。その経験が自分のテーマを見つけるきっかけになるかもしれません。私自身、肥満外科手術の内科管理の患者さんを受け持った事をきっかけにして、糖尿病の病態の出発点として腸管免疫に着目し、現在のコロンビア大学微生物免疫学教室への留学という道に進みました。1人1人の患者さんを丁寧に診察し、未来の内科学に必要な問題点を抽出していく、そんな当たり前のことを自然な形で教えてくれるのが慶應内科だと思います。内科医としての土台を地に足を付けて築き、その土台を基に世界に挑戦してみたい後輩の皆さん、是非慶應内科の門をたたいてみて下さい。
慶應義塾大学医学部
腎臓内分泌代謝内科 専任講師
川野 義長
風通しよく、垣根も低く
慶應義塾大学内科学教室のモットーは「内科は1つ」であります。現在、循環器・呼吸器・消化器・神経・腎臓内分泌代謝・血液・リウマチ膠原病の7科に細分化されていますが、科を超えて協力し合い患者さんを診ること・若手内科医を教育することを大切にしています。私が受けてきた教育はまさにこの「内科は1つ」という理念に集約されます。
私は旧研修医制度のもと、1年目からリウマチ内科(現リウマチ・膠原病内科)の大学院生として入局しました。2年間の内科ストレート研修をしながら研究をする日々は大変刺激的で中身の濃い時期でした。研究テーマが全身性エリテマトーデス(SLE)であったこともあり、最も多い合併症である腎炎に興味を持ちました。当時の上司から膠原病の腎臓を深く理解しなさい、腎生検の手技・腎病理を勉強してきなさいと鼓舞されました。「内科は1つ」とはよく言ったもので、垣根を超えてすぐさまリウマチ内科から腎臓内科へ出向させていただけました。私を腎生検班の先生方は暖かく迎えてくださり、手取り足取り・熱心に教育してくださいました。その結果2008年よりリウマチ膠原病内科腎生検班が独立し当科で必要な腎生検を全て行うことができるようになりました。腎臓内科の先生がリウマチ膠原病内科若手医を教育してくれた賜物です。
私を教育してくださった他内科の先生方はもちろんこれだけではありません。全ての内科の先生方がたとえ他内科であっても「内科は1つ」であり、自分の後輩として面倒よくみて教育してくださいました。自らの努力だけでは乗り越えられない時に、様々な領域のエキスパートに気兼ねなく助けてもらえるのが慶應義塾大学内科学教室の強みです。これからもこの理念に基づき若手医師を教育できるよう自らスキルアップしていきたいと思います。
リウマチ・膠原病内科
講師
花岡 洋成
「深く診る」ために「広く診る」
私の目標は「アレルギー診療のエキスパート」となることです。アレルギーはあらゆる臓器に発症します。例えば気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻結膜炎はどれもダニ抗原への感作・曝露が原因となり、1人の患者さんの中でこれらが合併することも多いです。 私はまず、代表的なアレルギー疾患である「気管支喘息」を切り口にアレルギー疾患への理解を深めるべく卒後3年目に慶應内科に入局し、大学病院と静岡赤十字病院で1年間ずつ内科全般の臨床研修を行いました。そして卒後5年目に呼吸器内科を専攻して大学病院に戻り、同時に大学院に進学して基礎研究に従事しました。この研究テーマは湿疹を契機に食物アレルギー、アレルギー性鼻炎や気管支喘息などの様々なアレルギー疾患が発症する「アレルギーマーチ」の病態解明に端を発しています。2015年に博士課程を修了して卒業した後は済生会宇都宮病院に出向して呼吸器内科臨床を行いながら、喘息や禁煙支援に関する臨床研究を行いました。その後に2018年に英国・ロンドンにあるGuy’s & St Thomas’ Hospitalのアレルギー科に留学して成人・小児のアレルギー診療に特化した臨床研修を行いました。2019年に再び大学病院に戻り、呼吸器内科および2018年に新設されたアレルギーセンターに勤務しています。アレルギーセンターには呼吸器内科医だけでなく消化器内科医も所属しており、好酸球性食道炎・胃腸炎の診療にも協働してあたっています。
アレルギー診療には内科以外にも小児科・皮膚科・耳鼻咽喉科・眼科・救急科など様々な科が関連しますが、臓器横断的な視点をもって患者さんを終生ケアする役割を担えるのは内科医のみです。最近は生物学的抗体製剤やアレルゲン免疫療法などの臓器横断的な治療効果を備えた薬剤が出現しましたが、これらの薬剤を十分に使いこなすには患者さんの全身を診察して俯瞰的な判断をする必要があります。内科研修で「広く診る」トレーニングを積むことで初めて「深く診る」ことができるのです。私は今後、呼吸器を得意分野としたアレルギー内科医を目指して臨床・研究・教育を継続していこうと考えています。
このように、あなたが専門性を深めながらもジェネラリストとしてのトレーニングも積みたいのならば慶應内科はベストな選択肢です。そしてもしTotal Allergistになるための研鑽希望がありましたら、ぜひ一緒に勉強していきましょう。お待ちしています。
呼吸器内科・アレルギーセンター
助教
正木 克宜
総合力と専門性
私は慶應義塾大学医学部内科学教室に入局し、2年間の総合的な内科研修を経て血液内科に進みました。簡単にこれまでの経緯をお話させて頂きますので、内科学教室・そして血液内科に興味を持って下さっている皆さまの一助となれば幸いです。
川崎市立川崎病院という救急・総合診療が盛んな病院で初期研修をしました。その影響か、当時は特定の専門性を高めることより、総合的に患者さんを診られるような医師を目指していました。そこで医学の基礎である内科を選び、慶應義塾大学医学部内科学教室に入局し、大学病院そして関連病院(けいゆう病院)で総合的な内科研修を行う機会に恵まれました。同じ薬剤や病態に向き合っても、それぞれの専門家で考え方や対処法が異なります。異なった視座から病態を考察することは内科医の成長に必要不可欠なことであり、若いうちにこれを経験できた事は幸運でした。これは内科学教室を一つの教室として運営している、慶應ならではの利点だと思います。内科研修の過程で、全身管理の観点から腫瘍学や感染症学をより深く学びたいと考えるようになりました。患者さんにとっても私にとっても幸いな事に、最初に急性骨髄性白血病の治療をさせて頂いた方々は化学療法だけで完治し、厳しい治療でもそういった喜びを患者さんと分かち合える事に惹かれ、血液内科への入局を決めました。
血液内科は比較的希少な疾患を専門としており、大量化学療法や造血幹細胞移植などは血液内科に特有な治療法です。専門性が高く血液内科の知識はあまり他の診療科では役に立たず、逆もしかりと思われるかもしれません。しかし我々の医療の根幹は「全身管理」であります。移植医療でもそれは変わらず、呼吸循環・電解質・栄養など、総合内科医療の上に血液内科特有の治療が成立します。専門性と総合医療という概念は相反するものの様に語られることがしばしばありますが、それらが両立している事を日々我々は実感しております。そのため「内科は一つ」を理念に掲げる慶應内科学教室で学べたことは血液内科医として貴重な時間であったと強く感じております。
しかし現行医療でも治療困難な症例も多く、そこで研究の重要性に気づかされました。臨床研究もしくは基礎研究をする事でしか解決策は見つからないからです。白血病や骨髄異形成症候群は造血幹細胞の異常により発症する事が知られており、まずは大学院生として正常造血幹細胞について勉強しました。臨床と基礎研究はかけ離れていると思われるかもしれませんが、臨床で養われた論理的思考は基礎研究でも必要なものでした。一方で、大学院期間を終えて臨床に戻った後も、基礎研究で培われた科学的思考や実験手法に関する理解は、臨床現場で大いに役立ちました。これは血液学の特徴で、臨床と基礎研究の距離が近く、基礎研究での知見がすぐに検査・治療に結び付く分野であるからだと思います。
臨床現場で再び難治性疾患の患者さんと向き合うと、さらに白血病研究への熱が増してきました。難治性疾患の新規治療法を見つけるということは、医師にとっても大きな喜びです。私の場合は白血病研究の場を探すのにあたり、マウスの細胞ではなく、実際の疾患検体を使った研究をしなければ治療には辿り着けないと考え、検体を広く集め研究を展開している研究室を探しました。そこで、スタンフォード大学Majeti博士に出会いました。Majeti博士は急性骨髄性白血病研究の第一人者で、「前白血病幹細胞」という概念を最初に報告しました。急性骨髄性白血病発症時には、骨髄の中に異常細胞(白血病細胞)と正常細胞が混在しています。しかし一見正常と思われる造血幹細胞にも一部遺伝子異常を有する集団が存在します。これらは前白血病幹細胞と呼ばれ、白血病の温床となり、そして再発の源となるという概念です。その他にも同研究室では、全米屈指の総合大学であることを生かし、大学内で開発された様々な新規技術を、黎明期に血液学へ導入しています。
血液学は日々進歩しており、臨床・研究共に全力で臨む医師が大勢います。血液学に興味のある皆さまは、ぜひその気持ちを絶やすことなく、我々にご連絡頂ければと思います。
Stanford University, Cancer Institute
博士研究員
雁金 大樹