神経内科

教授メッセージ

神経内科教授 中原 仁

神経内科教授 中原 仁

内科学教室の一員として神経内科では、中枢神経系(脳・脊髄)、末梢神経、筋肉を侵す様々な内科疾患を担当しています。
このなかには神経難病と称される数多くの難治性疾患も含まれており、それら患者様やご家族が日々病(やまい)と格闘されつつも、いつしか「奇跡」が起きることを一日千秋の想いで待っておられることを痛感しています。かつて神経内科では「診断学あれど治療学なし」と揶揄される時代が長く続きました。しかし昨今、難治性神経疾患に対する画期的治療薬が次々と開発されるに至り、かつての「奇跡」は現実のものになろうとしています。
慶應義塾大学医学部神経内科は我々が「最後の砦」であることを強く自覚し、あらゆる手段を駆使しながら、患者様の生命の質(quality of life)を向上させる努力を惜しみません。その上で、未だ治療が確立していない様々な難病に対して、最先端の医学を動員し、治療に繋がる国内外のどんな小さな可能性(シーズ)にも目を配り、自ら積極的に新規治療法の臨床開発に注力して参ります。
そのために「多様性」を重んじ、学内の基礎・臨床双方の教室はもちろんのこと、他学部や他大学との協働や産学連携も積極的に取り入れ、塾祖福澤諭吉の医学への想い「医師休道自然臣(医師よ、自分たちは自然の家来に過ぎないなどと言ってくれるな)」を胸に刻み、学祖北里柴三郎が唱えた基礎臨床一体型医学の精神を具現化するべく進めて参ります。
神経「治療学」の原動力となるのは、患者様やご家族の声に耳を傾け、現状を憂い、「奇跡」を共に渇望する若き医師たちのまっすぐな情熱です。慶應義塾大学医学部神経内科では「若き力」がその力を思う存分発揮できる教室であることを何よりも重視しています。大学院ではphysician-scientist(科学的素養を有した医師)を育てるべく、治療に対する情熱、冷静な科学的思考力、そして強いリーダーシップを有した、神経内科の次世代リーダーを養成します。
これら「治療学」、「多様性」、「若き力」を掲げて、慶應義塾大学医学部神経内科は、日本はもとより世界の神経内科学を牽引し、患者様やご家族に一日でも早く治療をお届けできるよう、教室員一同粉骨砕身精進しております。皆さんに我々の仲間に加わっていただき、神経難病が「難病」と呼ばれなくなる日が一日でも早く来ることを心から願っています。

専修医教育

一般診察に加えて神経学的診察を行い,神経学的所見を正確に把握できるように研鑽を積み,診察所見から得られた所見から,部位診断,さらに鑑別診断を行えるようにトレーニングをします。そして,鑑別診断から必要な画像診断,神経生理学的な検査を抽出し,各検査の特徴を理解し,検査結果を元に確定診断に至る,さらに文献調査を含めたEBMに則り治療方針を決めていく診療課程を修得します。

一般内科的な後期臨床研修の後に,日本神経学会認定神経内科専門医を目ざして,神経内科医としての専門的なトレーニングを開始します。上級医として研修医と共に病棟の患者を受け持ち,チャート・カンファレンス,症例カンファレンスなどで教授,スタッフ,チーフと相談しながら,中心となって診療を進めていきます。また,スタッフの外来に付いて,神経内科専門外来の診療の仕方を学びます。教育的なプログラムとして,筋電図や脳波などの検査方法の習得・判読を学ぶことができます。臨床のみならず,臨床研究,基礎研究(動物実験を含む)を行い,学会発表,論文作成も行うことが可能です。さらに、subspecialtyとして脳卒中専門医、頭痛専門医、認知症専門医、臨床神経生理学会専門医などの取得を目指すことも可能です。

専修医教育の特徴

当教室は中原仁教授以下、准教授、専任講師、助教、大学院生をあわせて約40名を擁し、40床程の病床を管理しています。対象疾患は、神経変性疾患(パーキンソン病、認知症、脊髄小脳変性症など)、脳卒中、脱髄性疾患、感染症、頭痛、てんかんなど広範囲に渡っており、他科との関連がある疾患が多いのも特徴です。

病棟では1人の患者様の診療に、教授以下、病棟主治医(チーフ)、上級医(オーベン)、研修医がチーム制で担当となり、チャート・カンファレンス、症例カンファレンス、脳神経外科・リハビリテーション科・精神神経科との合同カンファレンスなどにより、多方面から総合的に治療方針が検討され、診療が進められます。外来では、特殊外来として、メモリークリニック(認知症)外来、神経免疫外来、頭痛外来、パーキンソン病外来、ボトックス・デバイス外来、多発性硬化症外来、ALS・遺伝性疾患外来を設け、患者様のニーズに応えるよう努力しています。また、神経内科専門医からのレクチャーとして、アライアンス施設(関連病院)を含めた勉強会を定期的に開催しています。

専修医修了コンピテンシー

全入院患者の1週間の診療内容、病態をスタッフとともに検討するチャートカンファレンスを毎週行っています。若手医師を中心に、貴重な症例を文献的考察を含め詳細に検討する症例カンファレンスを定期的に行い、臨床推論の力を磨いています。さらに、リハビリテーション科・脳神経外科・精神科との合同カンファレンスも定期的に行っており、科を超えた神経疾患の最新の診療を勉強できます。

神経内科は専門性の高い疾患が多く、当研究室では複数PI(Principal Investigator)制をとっており、各領域の専門医の下で、臨床・研究に取り組むことが可能です。神経内科専門医を取得後、脳卒中専門医、頭痛専門医、認知症専門医などのサブスペシャリティ資格を取得することが可能です。また、急性期脳血管障害の治療には、脳神経外科と協同のうえで血栓溶解療法・血栓回収療法に対応しており、手技を学ぶことができます。

脳から脊髄、末梢神経から筋肉に至るまでの経路における障害を取り扱う科であり、頭から足先までの全身を診察、評価することが求められます。原因も脳血管障害や免疫性、代謝性、遺伝子異常や原因不明の神経変性疾患に至るまで実に多彩であり、多数の疾患に対する幅広い知識が必要です。ベッドサイドでの研修のみでこれら全てを学ぶのは不可能と言えるでしょう。当科では症例カンファレンスや各専門医による勉強会を定期的に行っており、知識の拡充も行える理想的な研修プログラムを構築しております。神経症候学を基礎として、脳血管障害、パーキンソン病、頭痛、認知症、免疫性神経疾患など専門的な分野についても幅広く学ぶことができる環境が整っています。決して神経内科は「難しい」、「分からない」学問ではありません。ぜひ神経学の面白さを学びに、当科に研修に来てください!

先輩からのアドバイス

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