教授メッセージ
専修医教育
病棟では、病棟チーフ(卒後10-20年目)と呼吸器内科レジデント(卒後6-10年目)とチームを作り、入院患者10名程度を担当します。治療方針の決定など、入院患者の診療に主体的な役割を果たすことが求められます。7週間の研修中に多くの呼吸器疾患に関して、EBMに基づいた診断・治療法を学ぶために、受け持ち症例以外の症例についても、積極的に回診、カンファレンス等を利用して研修することが期待されます。研修中に担当する疾患として、肺癌、胸膜中皮腫、縦隔腫瘍などの腫瘍性疾患の他、COPD、気管支喘息などの閉塞性肺疾患、特発性間質性肺炎、サルコイドーシス、急性呼吸促迫症候群などのびまん性肺疾患、各種呼吸器感染症、睡眠時無呼吸症候群などを経験します。
また、外来診療の補助業務を通じて、咳嗽や呼吸困難、胸部異常陰影のなどの初診患者の対応に加え、非結核性抗酸菌症や安定期の喘息やCOPDの管理など、外来での管理が中心となる疾患についても研修します。さらに気管支鏡検査に参加し、呼吸器内科研修終了時までに基本的な手技(内視鏡の挿入から内腔観察まで)を習得することを目指します。
また、呼吸器内科レジデントが、専修医を対象に、呼吸器臨床に必須な内容に関するショートレクチャーを、定期的に開催しています。
専修医教育の特徴
当院の特徴として、結核モデル床を有することから合併症のある肺結核の症例が経験可能です。また、呼吸器外科、放射線科との連携が円滑で、CTガイド下生検・外科手術・放射線治療などの幅広い診断・治療方法に触れることができることなどが挙げられます。
内科医としての総合的な臨床研修を行うと共に、この期間に卒後5年間の臨床研修後に受験可能となる日本専門医機構認定内科専門医取得に向けて、基本的な呼吸器疾患症例を中心に臨床修錬を行います。
また、学問的に貴重な担当症例に関しては、専修医に積極的に学会発表を行っていただく中で、研究の進め方や発表技法を積極的にサポートします。その他にも、呼吸器内科レジデントとのディスカッションやショートレクチャーを通じた、屋根瓦式の教育体制を敷いていることが特徴であります。
専修医修了コンピテンシー
卒後3年目では、当科研修期間中に以下のことが主体的に行えることを目標とします。
診断法
胸部X線読影、胸部CT読影、PET、肺換気血流シンチグラフィー、呼吸機能検査、睡眠ポリソムノグラフィー、睡眠時呼吸モニター、血液ガス分析、酸塩基平衡、気管支鏡検査、胸腔穿刺、胸膜生検。
治療法
肺癌化学療法、がん緩和ケア、気管支喘息・COPDの管理、間質性肺炎の管理、肺血栓塞栓症の予防・治療、在宅酸素療法(HOT)、CPAP、非侵襲的陽圧換気(NIPPV)療法、人工呼吸管理、病原体や薬剤感受性に基づく適切な抗菌化学療法、胸腔ドレナージ、胸膜癒着術。
肺炎、気管支喘息、COPDなど、日常診療で遭遇しがちな呼吸器疾患に関するクルズスを行っています。当科のクルズスの特徴として、実際に病棟で主治医を務め、当直も行っている比較的若い(卒後5~7年目)先生が担当している点が挙げられます。このため教科書的でなく実践的な内容になっており、研修医からも質問しやすいとの評価をもらっています。呼吸器内科をローテートしていない先生も大歓迎ですので、興味のある方は是非ご参加ください。
先輩からのアドバイス
「深く診る」ために「広く診る」
私の目標は「アレルギー診療のエキスパート」となることです。アレルギーはあらゆる臓器に発症します。例えば気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻結膜炎はどれもダニ抗原への感作・曝露が原因となり、1人の患者さんの中でこれらが合併することも多いです。 私はまず、代表的なアレルギー疾患である「気管支喘息」を切り口にアレルギー疾患への理解を深めるべく卒後3年目に慶應内科に入局し、大学病院と静岡赤十字病院で1年間ずつ内科全般の臨床研修を行いました。そして卒後5年目に呼吸器内科を専攻して大学病院に戻り、同時に大学院に進学して基礎研究に従事しました。この研究テーマは湿疹を契機に食物アレルギー、アレルギー性鼻炎や気管支喘息などの様々なアレルギー疾患が発症する「アレルギーマーチ」の病態解明に端を発しています。2015年に博士課程を修了して卒業した後は済生会宇都宮病院に出向して呼吸器内科臨床を行いながら、喘息や禁煙支援に関する臨床研究を行いました。その後に2018年に英国・ロンドンにあるGuy’s & St Thomas’ Hospitalのアレルギー科に留学して成人・小児のアレルギー診療に特化した臨床研修を行いました。2019年に再び大学病院に戻り、呼吸器内科および2018年に新設されたアレルギーセンターに勤務しています。アレルギーセンターには呼吸器内科医だけでなく消化器内科医も所属しており、好酸球性食道炎・胃腸炎の診療にも協働してあたっています。
アレルギー診療には内科以外にも小児科・皮膚科・耳鼻咽喉科・眼科・救急科など様々な科が関連しますが、臓器横断的な視点をもって患者さんを終生ケアする役割を担えるのは内科医のみです。最近は生物学的抗体製剤やアレルゲン免疫療法などの臓器横断的な治療効果を備えた薬剤が出現しましたが、これらの薬剤を十分に使いこなすには患者さんの全身を診察して俯瞰的な判断をする必要があります。内科研修で「広く診る」トレーニングを積むことで初めて「深く診る」ことができるのです。私は今後、呼吸器を得意分野としたアレルギー内科医を目指して臨床・研究・教育を継続していこうと考えています。
このように、あなたが専門性を深めながらもジェネラリストとしてのトレーニングも積みたいのならば慶應内科はベストな選択肢です。そしてもしTotal Allergistになるための研鑽希望がありましたら、ぜひ一緒に勉強していきましょう。お待ちしています。
呼吸器内科・アレルギーセンター
助教
正木 克宜