難病であるクローン病治療薬の安全性と有効性を検証する医師主導治験を実施
このたび、慶應義塾大学医学部内科学教室(消化器内科)の金井 隆典 教授、長沼 誠 専任講師らは独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)との共同研究により、クローン病に対する新薬の安全性と有効性を検証するための医師主導試験治験を開始しました。
クローン病は10-30歳代に発症し下痢、腹痛などの消化器症状が再発と回復を繰り返す慢性疾患です。小腸や大腸に炎症や狭窄をきたし、さまざまな内科治療に効果がなく手術を要する患者も存在します。クローン病の原因はいまだに不明な点が多いものの、最近の研究により食事などの環境因子が原因となり、さらに腸内細菌や食事などの腸管内抗原に対する過剰な免疫反応により腸に炎症を引き起こすと考えられています。このような免疫過剰状態を是正するために多くの治療法が開発されていますが、治療効果が得られても効果が減弱したり、副作用で薬剤が使用できない場合などがあり、新しい治療法の開発が望まれていました。
本研究チームが開発を進めている治療薬OCHは、動物レベルで腸炎を抑制する効果を有し、炎症性サイトカインを抑制する効果を有することを明らかにしてきました。共同研究グループのNCNPの山村 隆 博士らは、クローン病と病気の原因が似ている神経難病患者に対する治験を開始しましたが、クローン病はそれに続く治験となります。本治験では、治療薬を約6週間にわたって3つのグループ(1グループ4名のクローン病患者)に反復投与します。慶應義塾大学病院において、2016年9月上旬より、軽症から中等症のクローン病患者を対象として実施されます。
今回の治験によって、難病とされるクローン病の治療法開発が大きく前進することが期待されます。
対象患者
クローン病診断基準により慶應義塾大学病院で診断された16−70歳のクローン病患者のうち、軽症から中等症の活動性を有する患者を対象とします。活動性はCrohn's Disease Activity Index (CDAI)という指標を用いて、CDAIが150から450までの患者が対象となります。 また副作用発現の観点より患者の安全を確保するために、現在患者が行っている治療法のうち、インフリキシマブやアダリムマブを使用している患者は治験中、一定期間の休薬期間が必要となります。
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