急性膵炎の前向き多施設観察研究

急性膵炎前向き多施設観察研究について

慶應義塾大学医学部消化器内科学教室において、急性膵炎診療に積極的に取り組んでいる医療施設の先生方に協力していただき、急性膵炎の前向き多施設観察研究(略称「SANADA」study; multicenter proSpective cohort in pAtieNts with severe And milD Acute pancreatitis)を開始いたしました。 本邦における急性膵炎の短期及び長期的な予後とその成因を解明することを目標に参加施設の先生方と相談し、今後の急性膵炎の診療に重要となる項目を必要十分に網羅したデータベースを作成しております。 本研究は日本膵臓学会、日本集中治療医学会、日本集中治療教育研究会の先生方にご協力いただいております。ぜひご興味のある先生は以下の内容をよく吟味いただき、参加をご検討ください。参加ご希望の施設は事務局へご連絡いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

【データベース入力画面】

下のリンクよりデータベースの入力画面へお進みください。

各施設のIDとパスワードは事務局より発行いたします。不明な際は事務局までメールを頂けますと幸いです。

データベース入力画面(現在運用中)

【本研究開始までの経緯】

後ろ向き観察研究の結果

急性膵炎は10万人当たり、4.9-73.4人に発生する頻度の高い疾患です。2011年の日本の全国調査によりますと急性膵炎全体の死亡率は2.6%ですが、重症例に限ると10.1%と高く、有効な治療法が求められています。重症急性膵炎は、抗菌薬の予防投与、蛋白分解酵素阻害薬、局所膵動注療法、血液浄化療法など、有効性が議論されている治療がいくつか存在しますが、これらの治療法は後ろ向きに検討されていることが多く、大規模な前向き観察研究は存在しません。また、その長期予後に関しても報告も少ないのが現状です。以前に私達は全国の多施設の協力を得て局所膵動注療法と予後に関する後ろ向きの臨床研究を行いました。 44の参加施設から1192例の症例を集積することができました。この後ろ向き研究のデータを元に、この後ろ向き研究のデータを元に、局所膵動注療法の有効性を評価し、報告することができました。
Horibe M, Sasaki M, Sanui M, et al. Continuous Regional Arterial Infusion of Protease Inhibitors Has No Efficacy in the Treatment of Severe Acute Pancreatitis: A Retrospective Multicenter Cohort Study. Pancreas. 2017 Apr;46(4):510-517.

また、議論されている各治療法の有効性の検討、予後予測スコアの検証などをサブ解析の結果も順次報告しています。
Miyamoto K, Horibe M, Sanui M et al. Plasmapheresis therapy has no triglyceride-lowering effect in patients with hypertriglyceridemic pancreatitis. Intensive Care Med. 2017 Jun;43(6):949-951.

Ikeura T, Horibe M, Sanui M et al. Validation of the efficacy of the prognostic factor score in the Japanese severity criteria for severe acute pancreatitis: A large multicenter study.United European Gastroenterol J. 2017 Apr;5(3):389-397.

Kitamura K, Horibe M, Sanui M et al. The Prognosis of Severe Acute Pancreatitis Varies According to the Segment Presenting With Low Enhanced Pancreatic Parenchyma on Early Contrast-Enhanced Computed Tomography: A Multicenter Cohort Study. Pancreas. 2017 Aug;46(7):867-873.

前向き観察研究の計画

重症急性膵炎に対する局所膵動注療法の有効性は証明されませんでしたが、壊死性膵炎に対して有効性な可能性が示唆されました。 サブ解析として予後予測スコア、早期経腸栄養、早期造影computed tomography(CT)、 大量輸液などの有効性が示唆される結果でしたが、軽症膵炎が含まれていないこと、局所膵動注療法以外の治療法に関する詳細 な情報を収集していなかったこと、長期予後が不明なことが欠点として指摘されております。 そのため、軽症膵炎を含めた急性膵炎の全症例を前向きに登録することで、より精度の高い観察研究を計画した次第です。
 第1回ミーティング時資料
 第2回ミーティング時資料
 UMINーCTR

研究の目的

目的は、急性膵炎に関する様々な予後予測因子や治療内容と退院時死亡率の関連を検討すること、 重症急性膵炎後(改訂アトランタ分類による) の長期的な予後を検討することとしております。Primary outcome:は死亡としております。

研究期間

1)症例登録期間:急性膵炎を発症した日時が2017年1月から2021年12月までの5年間であった症例とします。
2)症例観察期間:急性膵炎を発症した日から5年間とします。(但し、発症日から5年後のフォローはフォロー日の前後6か月を許容するため2027年6月30日が最終症例観察日とします)

ウェブデータベースの作成と統計解析サポートについて

本データベースの作成および統計解析サポートにあたっては慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 宮田裕章教授、平原憲道先生にご担当いただいております(医療政策・管理学HP)。データベースの作成・管理に関しては慶應義塾大学医学部リサーチコンプレックス事業資金に基づき、「臨床ビッグデータ研究試験に関する臨床研究ネットワーク会議」での申請、検討を経て同教室より全面的にバックアップを頂いております。同教室はデータサイエンス部分を広く担当、臨床研究ICTを専門とされており、大規模臨床レジストリであるNCD事業にも強く関与しております。

本研究の研究組織

・研究責任者:金井隆典(慶應義塾大学)
・研究アドバイザー:辻喜久(滋賀医大)、讃井將満(自治医大さいたま医療センター)、真弓俊彦(産業医大)
・研究実務責任者:岩崎栄典(慶應義塾大学)
・研究事務局:堀部昌靖(慶應義塾大学)
・支援団体:日本膵臓学会日本集中治療医学会日本集中治療教育研究会
・現在の参加施設

参加施設

   

東海大学医学部付属病院関西医科大学附属病院
自治医科大学附属さいたま医療センター武蔵野赤十字病院
三重大学病院長崎大学病院
名古屋大学医学部附属病院大阪府済生会千里病院
和歌山県立医科大学日本大学病院
宮城厚生境界坂総合病院多摩総合医療センター
奈良県西和医療センター飯塚病院
JA広島総合病院札幌医科大学
東京都済生会中央病院横浜市立市民病院
千葉大学医学部附属病院日本医科大学千葉北総病院
大阪市立大学医学部附属病院大阪府済生会中津病院
京都府立医科大学附属病院神戸大学医学部附属病院
藤田保健衛生大学坂文種報德會病院信州大学医学部附属病院
慶應義塾大学病院兵庫医科大学病院
産業医科大学病院昭和大学病院
滋賀医科大学広島市立広島市民病院
東京医科大学国立病院機構東京医療センター
公立豊岡病院近畿大学病院
東北医科薬科大学病院東邦大学医療センター大橋病院
東京大学医学部附属病院群馬大学医学部附属病院
秋田大学医学部附属病院東北大学病院
杏林大学医学部付属病院君津中央病院

【倫理申請にあたって】

これから研究に参加される先生へ

倫理申請に必要な書類をダウンロードしてください。当大学での倫理申請、倫理委員会からの照会、訂正など、現時点での最新の書類が必要な場合、またわからないこと、質問などは下記事務局堀部までメールをお願い致します。

 当大学の倫理審査番号は20160254、UMIN IDは000025468になります。

研究計画書
研究計画書(最新版)
倫理員会よりの承認
倫理員会よりの承認(最新プロトコルへの承認
情報公開文書(オプトアウト)

同意と説明書が必要な施設の先生方

慶應義塾大学ではNCD同様に観察研究である点よりオプトアウトにて倫理申請の許可が出ておりますが、施設によりましては前向き研究であるとの観点より説明書と同意書を要する場合があるかと思います。当方で作成しました説明と同意書もご参照ください。

・慶應義塾大学書式での説明文書(準備中)
・慶應義塾大学書式での同意書(準備中)

事務局連絡先

慶應義塾大学医学部消化器内科

 実務責任者 岩崎栄典・事務局担当 堀部昌靖(メールはこちらへ)


慶應義塾大学医学部消化器内科胆膵班のご紹介

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