慶應医学の大きな特徴は、一般・消化器外科、放射線科や腫瘍センター、内視鏡センター、予防医療センター、免疫統括医療センターなど診療科間の垣根が低いことです。この特徴を最大限に活かし、診療科の枠を超えて各診療科が強固な協力体制のもと、がん、免疫難病、肝不全・肝移植、特殊内視鏡治療など大学病院特有の難治疾患を適切かつ迅速に診断・治療を進めてまいります。
上部消化管疾患
診療の特徴
上部消化管グループは食道・胃・十二指腸に発生する疾患を対象として診療にあたっています。その中には胃がん、食道がんをはじめとする悪性腫瘍、 日本人に多いヘリコバクター・ピロリ感染に基づく胃十二指腸潰瘍やMALTリンパ腫、萎縮性胃炎、更には逆流性食道炎を含む胃食道逆流症や機能性ディスペプシアといった機能性疾患が含まれます。特に慶應義塾大学病院消化器内科の特徴としては早くからピロリ菌外来を開設し、2014年からは機能性消化管疾患の専門外来も設けるなど、一般診療に加えて大学病院としてのニーズに応えるべく、専門医療も行われているのが特徴です。また、食事のつかえ感や飲み込みづらさなどの症状は食道癌以外に、食道アカラシアや好酸球性食道炎と言った良性疾患でも生じます。これらの良性疾患の診断において、専門的な食道機能検査を行い、一般・消化器外科、内視鏡治療グループと連携し、適切な治療を行います。また、原因や病名のよくわからない胸やけ、胃酸がこみ上げてくるような感じ、胃痛、胃もたれなどの症状で日頃からお困りの方もぜひ一度ご相談ください。
対象疾患
食道疾患
胃食道逆流症(GERD)、逆流性食道炎(⇒KOMPASリンク)
機能性胸焼け、食道アカラシア、食道けいれん、ナットクラッカー食道
好酸球性食道炎
食道がん(⇒KOMPASリンク)など
胃疾患
ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
機能性ディスペプシア(FD)
胃潰瘍(⇒KOMPASリンク)
胃MALTリンパ腫、消化管間葉系腫瘍(GIST)、胃悪性リンパ腫、胃粘膜下腫瘍
自己免疫性胃炎、急性胃粘膜病変(AGML)、特発性胃不全麻痺、好酸球性胃腸症
胃ポリープ
胃がん(⇒KOMPASリンク)
など
十二指腸疾患
十二指腸潰瘍、十二指腸腺腫、十二指腸がん、十二指腸炎、悪性リンパ腫など
外来
慶應義塾大学病院消化器内科当科では月曜午後、水曜午後、木曜午後、土曜午前に機能性消化管疾患外来とピロリ菌外来を設けております。この他に土曜午後に上部消化管グループの医師が外来を担当しており、専門外来と同等の診療を受けることが可能です。
更に上部消化管疾患の診療には欠かせない上部消化管内視鏡や、食道や胃の機能性疾患に対しては、上部消化管グループの医師による高解像度食道内圧測定、24時間食道pHモニタリング・インピーダンス検査、流動食負荷による胃弛緩能検査(臨床研究)といった検査も行っております。
また、大学病院は医療機関であると同時に研究機関でもあります。上部消化管グループでは現時点の保険診療で対応できない患者様、並びに未来の患者様に貢献すべく、臨床研究を積極的に行っております。特に難治性ピロリ菌の治療やアレルギーなどの特殊例については、高い実績を有しています。除菌治療を受けたけれども不成功となってしまった方や、薬のアレルギーのため治療が難しい方は、ぜひご相談ください。
入院
上部消化管疾患の多くは外来治療が可能ですが、症状が悪化したときや手術が必要な時などには入院治療が必要です。 上部消化管領域の代表的な救急疾患である胃十二指腸潰瘍や食道静脈瘤等による上部消化管出血に対しては救急科、内視鏡センターと連携して迅速な診療を行っております。
入院中の患者様には教授とスタッフによる回診に加えて、上部消化管グループによるカンファレンスも行っています。これによりスタッフ全員が共通の認識を持って治療に当たっております。
また週1回、上部消化管クラスターカンファレンスが行われています。このカンファレンスでは一般消化器外科上部消化管グループ、腫瘍センター、内視鏡センター、放射線診断科・治療科とともに診療科間の壁を越えて、胃がん、食道がんといった悪性疾患を中心に包括的な治療方針の検討を行っています。